全事業者対象のパワハラ防止法——中小企業がいま整備すべき体制とは
2022年4月、改正労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)が中小企業にも完全適用されました。大企業には2020年から適用されていましたが、中小企業への適用猶予期間が終了し、現在は規模を問わず全ての事業者にパワハラ防止措置が義務付けられています。「うちは小さい会社だから関係ない」は通用しません。本稿では、中小企業がいま対応すべき事項を解説します。
1. パワーハラスメントの定義——何がパワハラになるのか
法律上のパワーハラスメントは、以下の3つの要素をすべて満たすものとされています(労働施策総合推進法30条の2第1項)。
- ① 職場における優越的な関係を背景とした言動
- ② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
- ③ 労働者の就業環境が害されるもの
厚生労働省の指針では、パワハラの行為類型として「身体的な攻撃」「精神的な攻撃」「人間関係からの切り離し」「過大な要求」「過小な要求」「個の侵害」の6類型が示されています。特に「精神的な攻撃」(叱責・威圧的な言動・無視)は、日常的な職場コミュニケーションとの境界線が難しく、注意が必要です。
2. 事業主が講じなければならない措置(10項目)
法律上、事業主は以下の措置を講じる義務があります。
【方針の明確化・周知】
- ① 職場でのパワハラを行ってはならない旨の方針の明確化
- ② 行為者に対する厳正な対処方針の就業規則等への規定と周知
【相談・苦情への対応】
- ③ 相談(苦情を含む)に応じ適切に対応するために必要な体制の整備
- ④ 相談者・行為者等のプライバシー保護のための措置と周知
- ⑤ 相談したこと等を理由として不利益な取り扱いを行ってはならない旨の定めと周知
【事後の迅速・適切な対応】
- ⑥ 事実関係の迅速・正確な確認
- ⑦ 被害者に対する適正な配慮措置の実施
- ⑧ 行為者に対する適正な措置の実施
- ⑨ 再発防止のための措置の実施
【その他】
- ⑩ 当該問題に対する労働者の関心と理解を深めるための研修等の実施
3. 中小企業が最低限整備すべき3点
上記10項目は包括的に整備することが理想ですが、人的・財政的リソースが限られる中小企業では、まず以下の3点から着手することをお勧めします。
① 就業規則へのパワハラ禁止規定の追加
就業規則にパワハラを服務規律違反として明記し、懲戒処分の対象とする旨を定めます。10人以上の事業場では就業規則の届出が義務ですが、規定内容が古いままの中小企業は多く、この機会に見直すことをお勧めします。
② 相談窓口の設置(内部・外部)
社内の特定の担当者(人事担当・管理職)を相談窓口として指定するか、顧問弁護士等の外部機関を窓口として活用することができます。相談者が「上司に相談できない」と感じる状況を防ぐため、複数のルートを確保することが重要です。
③ 管理職向けの研修実施と記録化
パワハラ問題は管理職の言動から発生することが多く、管理職への研修は特に効果的です。外部研修への参加、社内での勉強会など形式は問いませんが、実施記録(日時・参加者・内容)を残すことが重要です。
4. 対応が不十分な場合のリスク
パワハラ防止措置を怠った場合、以下のリスクがあります。
- 行政指導・公表:都道府県労働局・労働基準監督署から是正指導を受け、公表される可能性があります。
- 民事訴訟リスク:被害者から安全配慮義務違反(民法415条・709条)を根拠に損害賠償請求を受けることがあります。会社の使用者責任(民法715条)が認められた判例も多くあります。
- 採用・信用への影響:SNSや口コミサイトに情報が拡散し、採用・取引先への悪影響が生じるケースが増えています。
5. 弁護士によるハラスメント対応支援
当事務所では以下のサービスを提供しています。
- 就業規則のパワハラ・ハラスメント関連規定の整備
- 相談窓口(外部窓口)としての機能提供(顧問契約内)
- ハラスメント発生時の事実調査・対応方針のアドバイス
- 懲戒処分の相当性チェック・手続きサポート
- 被害者・行為者対応時の法的リスク管理
「就業規則を見直したい」「ハラスメント相談が来たがどう対処すべきか」という段階から、遠慮なくご相談ください。
まとめ
パワハラ防止対応は「大企業だけの問題」ではなく、規模を問わず全ての事業者が対応すべき課題です。整備が遅れれば遅れるほど、万が一問題が発生した際のリスクは大きくなります。「何から始めればよいかわからない」という方も、まずは一度ご相談ください。当事務所は初回相談無料で対応しております。