金融分野は、テクノロジーの進化と国際規制の動向を受けて、法改正のサイクルが特に早い領域です。本稿では、2025年度に金融機関・保険会社・フィンテック事業者が対応すべき主要な法改正について解説します。

1. 金融商品取引法——プロ向けファンド規制の強化

近年、いわゆる「プロ向けファンド」(適格機関投資家等特例業務)を利用した投資詐欺・不適切販売が問題となっており、規制強化の流れが続いています。2025年度においては以下の点に注意が必要です。

  • 適格機関投資家の要件厳格化:特例業務の届出制度の運用見直しにより、名目的な適格機関投資家の関与で一般投資家に勧誘するスキームへの監視が強化されています。
  • 説明義務・適合性原則の強化:金融商品の販売において、顧客の知識・経験・財産状況・投資目的を踏まえた適合性確認が求められます。AIを活用した顧客分析ツールの導入が進んでいますが、最終的な適合性判断の責任は金融機関側にあります。
  • インサイダー取引規制の実務運用:M&A情報・決算情報・重要事実の管理体制の点検が必要です(詳細は別稿「2026年度 企業法務に影響する主要法改正」参照)。

2. 資金決済法——暗号資産・ステーブルコイン規制

2022年6月に成立した「安定的かつ効率的な資金決済制度の構築を図るための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律」により、電子決済手段(ステーブルコイン)に関する規制が新設されました。

主なポイントは以下の通りです。

  • 法定通貨建てのステーブルコイン(電子決済手段)の発行・仲介業務の登録制導入
  • 発行者に対する準備金の保持義務・分別管理義務
  • 外国電子決済手段取引業の登録制度

暗号資産交換業者・決済サービス提供事業者は、自社サービスがこれらの規制の適用対象となるかを確認する必要があります。グレーゾーンとなる新サービスについては、事前に弁護士・金融庁への相談を強くお勧めします。

3. 銀行法・保険業法——グループ規制の柔軟化とデジタル化対応

金融グループのデジタル化・多角化を促進する観点から、銀行法・保険業法の業務範囲規制が段階的に緩和されています。具体的には、フィンテック関連業務・データ分析業務・DX推進支援業務等への参入が認められるようになっています。

一方で、グループ内の情報管理・利益相反管理・ガバナンス体制に関しては、より厳格な対応が求められています。監督指針改正への対応を都度確認することが重要です。

4. AML/CFT(マネーロンダリング・テロ資金供与対策)の強化

FATFの第4次相互審査(2021年〜2024年)の勧告を受け、日本のAML/CFT対応は大幅な強化が求められています。2025年以降、以下の対応が実務上必要となります。

  • 顧客管理(KYC)の高度化:リスクベース・アプローチに基づく顧客リスク評価の文書化
  • 実質的支配者(UBO)の確認・記録の徹底
  • 疑わしい取引の届出(STR)の精度向上
  • 取引モニタリングシステムの整備・定期的な有効性評価

銀行・証券・保険・資金移動業者など、あらゆる金融機関にとって対応が急務となっています。

5. ESG・サステナビリティ情報開示

国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が策定したIFRS S1・S2基準に基づく気候変動関連情報の開示が、東証プライム上場企業を中心に義務化の方向で進んでいます。金融機関はポートフォリオ全体のGHG排出量(Scope3)の把握・開示も求められており、法的リスク管理の観点からの対応が必要です。

まとめ

金融規制の法改正は専門性が高く、自社への影響を正確に把握するためには法律の専門家の関与が不可欠です。当事務所では、金融機関・フィンテック事業者を対象に、法改正への対応アドバイス・社内規程の整備・金融庁対応支援を行っています。「自社のサービスに規制が適用されるか確認したい」という段階からご相談いただけます。