「Googleマップの口コミに根拠のない悪評が投稿された」「X(旧Twitter)で事実無根の情報を拡散されている」——こうした相談が近年急増しています。インターネット上の誹謗中傷は、企業の信用・採用・売上に直接的な悪影響を及ぼします。本稿では、企業が取るべき対応の流れを法的観点から解説します。

1. まず確認すべきこと——「誹謗中傷」と「正当な批判」の境界線

法的対応の前提として、問題の投稿が法律上「違法」といえるかを判断する必要があります。批判・酷評であっても、事実に基づいた意見表明は原則として違法になりません。違法となるのは、主に以下のケースです。

  • 名誉毀損:公然と事実を摘示して人(法人含む)の社会的評価を低下させる行為(刑法230条)
  • 侮辱:事実の摘示なしに相手を貶める表現(刑法231条)
  • 業務妨害:虚偽の風説を流布して業務を妨害する行為(刑法233条)
  • 不正競争行為:競業他社が組織的に行う場合(不正競争防止法2条1項21号)

投稿が「批判的だが事実に基づいている」場合は、法的削除請求よりも適切な反論・対話・改善対応の方が有効なことがあります。まずは弁護士に相談し、法的対応が有効かどうかの見極めを行うことをお勧めします。

2. 削除請求の方法

違法な投稿と判断される場合、削除を求める手段は大きく3つあります。

① プラットフォームへの申告(送信防止措置依頼)
X、Google、Facebook等の各プラットフォームには、違反コンテンツの申告窓口があります。利用規約違反に該当する場合(ハラスメント・虚偽情報等)は、申告だけで削除されることもあります。手続きが簡単で費用もかかりませんが、必ずしも削除されるとは限りません。

② プロバイダ責任制限法に基づく削除請求
プロバイダ(サービス提供事業者)に対し、権利侵害を主張して削除を要求する方法です。改正プロバイダ責任制限法(2022年施行)により、裁判所の仮処分を利用した削除が迅速化されました。

③ 仮処分(裁判所)
地方裁判所に対し、投稿削除の仮処分命令を申し立てる方法です。緊急性が高い場合に有効で、認められれば数週間〜2ヶ月程度で削除が実現します。

3. 発信者情報開示請求——投稿者を特定する

投稿者が匿名の場合、まず「誰が投稿したのか」を特定する必要があります。2022年施行の改正プロバイダ責任制限法により、新たな非訟手続(発信者情報開示命令)が創設され、従来の仮処分・訴訟の二段階の手続が一本化されました。これにより、匿名投稿者の特定にかかる時間が大幅に短縮されました。

ただし、IPアドレスの保存期間(多くのプロバイダで3ヶ月程度)があるため、発見したら速やかに弁護士に相談することが重要です。時間が経過すると、ログが消えて投稿者の特定が不可能になります。

4. 損害賠償請求

投稿者が特定できれば、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求が可能です。請求できる損害の内訳は、①信用毀損による逸失利益、②弁護士費用、③慰謝料(法人の場合は限定的)などです。実際の回収可能性は投稿者の資力によりますが、特定・訴訟提起の事実だけで同様の投稿の抑止力になることもあります。

5. Glassdoor・転職サイトの口コミ対応

近年増加しているのが、Glassdoor・OpenWork(旧Vorkers)・転職会議などの就職・転職口コミサイトへの投稿です。元従業員による虚偽・誇張した評価は、採用活動に深刻な影響を与えます。これらのサイトはサーバーが海外にあることが多く、国内法の適用に一定の制約がありますが、対応は不可能ではありません。当事務所では海外プラットフォームへの対応実績もあります。

まとめ——発見したらすぐに動く

SNS誹謗中傷への対応で最も重要なのはスピードです。ログ保存期間の問題、拡散のリスク、心理的なダメージの蓄積——いずれも早期対応で最小化できます。「これは誹謗中傷に当たるのか」「法的に対応できるのか」という段階から弁護士に相談いただくことをお勧めします。当事務所は風評被害対策を主要業務の一つとして取り組んでおり、事業者様・ご紹介者の方は初回相談無料です。